今回の英国の国民投票は、資本主義や金融経済の秩序の大きな調整が近いことを示すひとつの事象だ。
先のリーマンショックにしろ、世界的な規模とは言っても、国際秩序との連動までにはならなかった。ここにきて、国家や社会の秩序と連動した信用収縮(バブル崩壊)の懸念が高まっている。これは歴史上初のことで、これから数十年は20世紀に築いたものの崩壊プロセスとして記録されると思う。
信用収縮とはつまり財の相対価値が下がるということで、財をもっている人間であればあるほど、端的に言えば金持ちであればあるほど、信用収縮のダメージが大きい。
金持ち、特に生まれつきの資産家は、金持ちであることがアイデンティティの基盤だ。金を失うことは自分を失うことと同じだと信じ込んでいる。だから信用収縮が怖くて仕方ない。いつ自分の手持ち財産が消えて庶民になるかと恐れていて、それを回避するためには自分の存在とアイデンティティをかけて死ぬ気になる。
金持ちは財産をいろいろな形で保有する。
株式・現金・債権・土地・不動産。いわゆるリスク分散。
このうち株は少しのバブル崩壊ですぐに価値が上下する。
世界経済レベルの信用収縮が起きれば、通貨や国債ですら危ない。
だからすべて現金や株式で保持する金持ちはいない。
だいたい、不動産やら油田やら鉱山やら、財産の一部は実需があるものに変えておく。
それでも不動産の利回りなんてよくて数%、リスクもそれなりに大きい。
理想的なのは「事業」だ。株による間接的な会社の保有ではなく。人間の欲とお金を交換することのできる力だ。食品だってソフトウェアだってトイレットペーパーだってなんでもいい。すべての財の根源はここにある。
逆に言えば、いま迎えている資本主義と金融経済の崩壊は、お金と欲が交換不能になってきているのが本質だ。実需が細ってきている。もっと簡単に言えば、みんな買いたいものがなくなっている。いや、買いたいものがないんじゃなくて、努力してまで欲しいものがない、か。