「君の名は」のつながりで新海監督の「言の葉の庭」をnetflixで鑑賞。
控え目に言って9億点。
よかった。
というかロジカルな判断が不能な作品だった。。
— (以下、ネタバレあり) —
このシンプルな理由が客観的評価を不能にしてる:
ユキノ先生の設定、完全に「ど真ん中」。
もうね、アカンやつだよユキノ先生。
魔性の女過ぎだよ。こういう人、いるよホントに。いたんだよホントに。
リアルすぎて、自分にとってはもはやユキノ先生を見る映画にしかならんかった。
そのぐらい、とにかく先生の「思わず助けたくなる女性」の設定がすさまじい。
ユキノ先生はいわゆる女の人同士の中で刺されやすいパーソナリティで、(だからこの作品は女の人ウケはないと思う)、徹底的にそこを狙ってきてるのがヤバい。正直、ユキノ先生はズルい女。そのズルさがリアルで、冷静に見れば相当に許容されないもののはずなのに、この作品は圧倒的な映像美とBGMと展開で万葉集に仕立て上げる。その合理性の破綻が、本当に痛快な限りだ。視聴者(男性)にアオハルを強制的に再現させちまうパワー。
まず古典の先生ってところで1億点。
これが理科の先生だとちょっと違う。ちょうど自分が高校生だった時になんとなく好きだった古典の先生がいて、そこにモロ被りだったよ。
次に、27歳ってところで1億点。
これが24歳なら青臭くなりすぎ。30歳だと15歳を振り返ることができなくなる。27歳っていう大人と子供の境界線ギリギリを彷徨うラインが素晴らしい設定。
さらに、メンタル崩壊してるところが1億点。
途中、出発寸前の電車に向かって少し顔を下に向けながら踏み出そうとする一瞬の演出がヤバい。自宅から出ないんじゃなくて、ホームまで一応行ってるところに苦しさが滲み出てる。実際に自分もそういうのに近い経験をしてるのもあるし、同じような経験をしてる人の話を知ってたりするからなおさら。鞄に入れてるおつまみのチョコレートの量もキテる。
次に、元カレに電話してるズルさが1億点。
元カレは同じ学校の伊藤先生。しかも不倫っぽい描写もあり。
ユキノ先生のモノローグ「あなたは周りの声ばかり聴いていて、私を信じてくれなかった。」ってまぁ、伊藤先生も学校内からの目を考えればユキノ先生をかばったらマズい立場だろうし、不倫だとしたらなおさらユキノ先生そのあたりしっかり割り切らないとアカンのでは。。
さらに、電話でのセリフ「別れてからも迷惑かけてごめんね」の「も」だよ。も。別れる前に「も」迷惑かけてたわけですよ。どうみても浮気バレなのか不倫バレが匂うじゃないですかユキノ先生。
そして極めつけは主人公のことを「おばあちゃん」に置き換えてるところ。この演出で僕は感動した。別れた男に別の男を匂わせたくないがためのその言葉。ユキノ先生超ズルいよ。嘘ついてばっかりだって自分で言ってるけど、ほんとにズルい。細かいところでは、スマホの通話履歴みると、伊藤先生に自分から電話かけてるのがわかる。
と、左脳ではズルいなぁと考えつつも、スマホの画面をオフにした瞬間に写り込む、自らのズルさと弱さに対峙する苦悩顔によって右脳がペイしてしまう。これぞ万葉集。人間、みんな汚い。ユキノ先生も一人の人間だし女だしズルいし、男は男でそこにガッツリと魅かれてしまう。それを十分に出し切ってくれました。圧倒的感謝。
最後に四国出身ってところが1億点。
やまとなでしこも東京ラブストーリーもだけど「田舎出の女の子の東京苦悩」ってのはほぼ反則に近い切なさがある。四国に帰るんだっていうセリフが出た時思わず「四国かよーーー! そこまで設定極まるか~~(ノ∀`)」みたいになった。
結論、
ユキノ先生ありがとう。完全にやられました。
現実にユキノ先生がいたら3秒で好きになる自信があるわ。
あと、全体の映像美はいわんや。
北野武のDollsぐらいの「観る」アンビエントBGM加減。
とにかく緑と光がいい。
無機質な東京の風景と水と雨と緑のコストラストがいい。
さらにシナリオもとにかく極めて分かりやすく、ドラマというか恋愛漫画。
切ない甘酸っぱいド・ストレート。
冷静に考えればなんでいじめっ子の彼氏と喧嘩するのか意味わからんのだ。
が、そんなの関係なく殴るのが素晴らしい。
青春は合理性が破綻してこそ。
本当によかった。
9億点なのに5億点分しか説明してねーじゃんという破綻を含め、
常識と社会と合理性に束縛されて身動きがとれなくなった現代に投げつける、
合理性の破綻こそがこの作品の魅力だ。