無駄打ちせず、引き付けるだけ引き付けて打つ

経営の現場の話を。

弱い者が強い物に挑むときには、必ず智慧が要る。

金も名もないウチみたいな零細企業が置かれる立場は、そんなところ。

事業をスタートするにあたり、初めに少し投資してテスト販売なりテストマーケティングをしてみる。
そして、手ごたえ、つまりお金が回りそうなことが確認できたら、次にどうするか。
ここがポイントで、いきなり1億集めてロケットスタートするようなやり方が良いケースと、そうでないケースをきちんと見極めなくちゃいけない。
場合によっては、”競合が気にもしないような規模で”事業をスタートさせるという方針が良いケースがある。
言い換えれば「戦略的に成長させない」。

そして時が来たときに不意打ちする。

国にしても同じ。

ずっと新興国のふりをしていた国が、外部の資本を受け付けず、弱いなりに地道に自分たちの国力をシコシコと育てあげ、潜りに潜って、ある時突然、先進国に対して威嚇する。

人は油断する生き物で、油断しているときに不意打ちされることに大変弱い。
たとえそれが予測できていたとしても、現実的な対応を取れない弱さがある。

突然牙を剥いた国に、列強は、その顔色こそ変えないものの、内心はパニックになる。
パニックになれば占めたもので、内部の政治は混乱に陥り、スキができる。

そのスキを見つけて一気に形勢逆転を狙う。
柔道じゃないけど。

事業もまったく同じで、スキを待つ。
相手にスキがなければ、何年でも潜り、耐え抜く。

強者は、弱者の野心に気が付けば、その弱者を殺すのが通例だ。
それは歴史が証明しているし、人間がこのDNAを持つ限り、暴力が経済やら宗教やらに形を変えることはあれど、本質は変わることはない。

だから、もし途中で、弱い段階で野心を見せて事業拡大を狙えば、たちまち潰されてしまう。

さらにこれを応用した、弱者同士の潰し合いもある。
ある弱者に、業界を同じくする弱者がいたとして、「○○と事業連携したほうがいいと思いますよ」とか「こういうプロモーションをすればいいですよ」というアドバイスを与え、わざと強者に気が付かせる施策を行わせ、場合により潰れさせ、そうでなくとも、強者がどういう反応をするかの試金石として使う。

逆に言えば、自分も常にそのリスクを考えながらアドバイスを聞く必要がある。

大なり小なり、経営をやるということは、智慧の戦いになる。
そういうことをしたくないならば、野心を持たず、弱者と強者にもならず、傍観するのが賢明だ。
特に今の時代、傍観に対してペナルティはほぼない、素晴らしい時代だと思う。
100年前であれば傍観は許されなかった。
今の時代、もっとも賢いのは傍観者なのかもしれない。

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